全ての大学は職業教育の場です!

(学生時代に書いた記事を発掘したので、一部修正して投稿します)


気になる記事が紹介されてたので、

> 修士論文の代わりに退学願を提出してきた http://blog.riywo.com/2009/02/27/120733

私自身も、就職活動に七転八倒した口で、昨日修士論文を提出し終わった所なので、思うことを書いてみます。

# 学問の府?

「やる気がある学生だけ来ればいい」「大学は学問の府」という意見は、しばしば重要な点を見落としています。それは、研究者になるのは学生のうちほんの僅かという点、そして研究者にならないからと言って劣った学生とは限らない点です。

# エリート輩出にはコストがかかる。

そもそも、大学院に限らず、教育機関はエリートの輩出という機能を持っています。

人から聞いた話なのですが、発展途上国では医師の数が非常に少ない。それは何故かと言えば、十分な教育を受けた時に、医師になれる人は数百人に一人くらいしかいません。この割合は貧富や人種に関係なく一定です。しかし、発展途上国ではそもそも教育を受けれられる人が少ないので、医師になれる人も少ない。

つまりピラミッドの底辺(中等教育を受ける人)が小さいので、ピラミッド上層(医師)も小さくなってします。

# 研究者もエリートである

この理屈は研究者にも成り立ちます。研究者になれるのは、大学に進学できた学生の中でもほんの僅かです。適切な教育方法を取れば打率を上げることは出来るかもしれませんが、学生全員を研究者にすることは出来ません。

また、ある学生が研究者になれるかどうかを(試験等で)事前に判定することは出来ず、実際に勉強をさせないと分かりません。
これは、大学の側が判断できないと言うわけではなく、学生側もそうです。ある程度学ばないと学問が面白いのかどうか判断できません。他にもっと情熱を打ち込めるものを見つけるかもしれません。

紹介されていた記事の「学問する気のない奴は大学に来るな」とありますが、例えば100人中99人は最終的に「学問する気のない奴」になるわけです。

# 学問のための職業教育

もし「研究者になる気概のあるヤツだけ来い、職業教育は全くしない」という大学があったとしましょう。

そんな大学はすぐに破綻するはずです。なぜなら、100人中99人は就職に困る迷う大学なのですから、入学者が集まらないでしょう。「オレは上位1%の超優秀な人材だ!絶対に研究者になれるはず」という超自信家な高校生なら別ですが、そんな人は少数でしょう(そして実際に超優秀なのは、そのさらに一部でしょう)。

だから、まともに研究者を排出しようとする大学は、職業教育も行わなくてはならないのです。

なお「職業教育」をどう捉えるかは大学の裁量の余地があります。職業教育といえば、資格を取らせるとか、プレゼンの練習といった教育ももちろんあります。一方で、「研究をし論文を書くことが結果的に就職・労働に有利になる」と考えて研究をさせる大学もありうるのです。

# 研究室での雑談について

あと、やる気がない学生がいると研究室で雑談されたりしてモチベーションが下がるというのは、また別の問題です。実雑談するしないというのは、やる気じゃなくて、マナーの問題です。あるいは研究室以外に雑談出来る場所が無いという設備面の問題ですよね?

# 最後に

この記事には、自分のやる気の無さを正当化する意図はありません。むしろ、恵まれた環境を提供していただきながら不甲斐ない結果しか出せなかったことや、研究室で他の学生の邪魔をしてしまったことに罪悪感を感じています。先生、先輩、同期のみんな、後輩、ありがとうございます、そしてごめんなさい。